猫の殺処分ゼロの社会を!
自走できる保護猫カフェの仕組み。
ネコリパブリック代表 河瀬 麻花さん

猫の殺処分ゼロの社会を! 自走できる保護猫カフェの仕組み。 ネコリパブリック代表 河瀬 麻花さん

2022年2月22日までに、日本での猫の殺処分をゼロにするために活動する河瀬さん。ベーグルの通販ショップを経営している力を元に、ボランティアではなく、自走して継続できる形を提案しています。そんな河瀬さんにこれまでの歩みを伺いました。

就職せずにバックパッカーとして生きる

私は岐阜県大垣市で、大正時代から続くパン工場の家に生まれました。昔から、小麦を扱うお店ではネズミよけのために猫を飼っていたので、私の家にもたくさんの猫がいました。そのため、小さな頃から猫や動物が大好きで、道で野良猫と目が合えば拾ってくるような子どもでしたね。「お家がないのはかわいそう」と思ってしまうんです。

ただ、家で飼える猫には限りがあるので、私が拾える猫にも限界がありました。そのため、全ての猫を救うために、将来はムツゴロウさんのように「猫の王国」を作りたいと考えていたんです。しかし、成長するにつれて、現実的ではないと分かり、その夢は次第に薄れていきました。

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また、私は好奇心の強い子どもでした。何でも一度は経験したいと思っていて、知らない場所に行ったり、食べたことのないものを食べることが好きでした。海外にも興味があり、高校生の時には夏休みを利用して、アメリカに1ヶ月ほどホームステイに行ったりもしました。

親も「やりたいことをやりなさい」と言ってくれていました。将来やりたいことはまだ分からなかったけど、とにかく新しいものに興味があったので、高校卒業後は色々な人がいる東京の大学に進むことにしました。海外にもたくさん行きたいと思っていたので、世界に近いことも魅力でしたね。

また、知らない世界に入り込むことができる映画が好きだったので、映像学科に進みました。そして、大学生になると、アルバイトをしてお金を貯め、長期休みには海外に行く生活を送っていました。

祖母と猫の生活を守るために家業のパン屋を手伝う

卒業後も就職はせずに、日本でお金を貯めては長期で海外に出るバックパッカー生活を続けることにしました。やりたいことは見つかっていなかったのですが、サラリーマンになるのは嫌だと思っていたんです。また、私の学科では就職する人はほとんどいなかったこともあり、焦りはありませんでしたね。

ヨーロッパや中東、東南アジアなど色々な場所に行きましたが、その中でも24歳の時に初めて訪れたインドが衝撃的でした。人も動物も獣も同じ空間で暮らしているし、同じ地域にお金持ちも貧乏の人もいる。ガンジス川では身体を洗っている人がいると思えば、すぐ横には服を洗濯している人もいるし、死体だって流れている。

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バックパッカーで世界を旅していた頃の河瀬さん(右)

そんな混沌とした光景を見て、この世には常識なんて存在せず「何でもありなんだ」と実感できたんです。そして、自分の悩みなんて小さすぎて悩みですらないと気づけましたね。

旅をしてもやりたいことは見つかりませんでしたが、いつかは夢中になるものが見つかると考えていました。ただ、東京は生活費が高かったので、旅行のお金を効率良く貯めるために実家に戻り、名古屋の会社でOLとして働くようになりました。

そんな時、実家のパン工場の業績が思わしくないことを知りました。卸先企業が潰れてしまったり、契約を解消されてしまい、危機的な状況だったんです。しかし、実家には祖母と8匹の猫が住んでいました。

そこで、私はその生活を守るために、実家を手伝うことにしたんです。また、ちょうど東京でパン作りの修行を積んでいた弟も戻ってくることになり、ふたりで新しいことを始めようと考え、それまでは卸しかしていなかったパン工場の前にベーカリーカフェを作り、小売を始めることに決めました。

自分の責任でベーグル専門店としてリニューアル

しかし、私も弟も岐阜の「モーニング文化」すら知らない状態で始めてしまったので、大失敗でした。東京のおしゃれな雰囲気を出せばお客さんが来ると勘違いしていたんです。

そんな時、旅の記録をするために趣味で作っていたWEBサイトのリンク仲間から、パンを送って欲しいと言われることがありました。最初は送料だけで届けていたのですが、思ったよりも好評だったので、次第に「通販として成り立つんじゃないか」と考えるようになりました。

それまではパン屋やお菓子を通販で売るなんて世の中では一般的ではありませんでした。しかし、実際に楽天でショップを出してみると、順調に数字は伸びていき、実店舗よりも売れるようになっていきました。

しかし、1年ほどしてお客さんも増えてきた頃、弟がまた修行に出ることになりました。そこで、売れていた中でも一番人気があったベーグルを工場でも作れるようにして、ベーグル専門店として再出発することにしたんです。

岐阜の猫カフェ「ネコリパブリック(ネコリパ)」

岐阜の猫カフェ「ネコリパブリック(ネコリパ)」

「ネコリパブリック(ネコリパ)」人気のベーグル

「ネコリパブリック(ネコリパ)」人気のベーグル

この時、会社の全責任を自分で背負ってみようと覚悟を決めました。正直、それまでは「自分がやりたいわけじゃない」という感覚もあって、大変なことがあるとすぐに周りのせいにしている自分がいました。何かあるとすぐに父や弟のせいにしてしまっていたのですが、そうやって不満を持ち続けるのはダメだと思っていたんです。

そして、1ヶ月お店を休業して、全て自分でコンセプトなども決めて、リニューアルオープンすることにしました。最初の商品を出荷する時ばかりは、さすがに胃が痛かったですね。自分で全て決めてたことがダメだったら、終わりですから。しかし、ありがたいことに多くのお客さんに買ってもらうことができ、業績も順調に伸びて楽天のショップ・オブ・ザ・イヤーにも選ばれるようになりました。

ビジネスとして継続的に猫の支援活動を

お店では、好きだった猫をキャラクターにしていたので、「猫のベーグル屋さん」としてお客さんには認知してもらっていました。ただ、ビジネスとして猫のために何かができるとは考えていませんでした。

そんな時、東日本大震災が起き、被災地に猫などの動物が取り残されている話を聞きました。そこで、私も何か支援できないかと思い、通販ショップで、動物保護団体に寄付するための特別商品を販売することにしました。すると、多くの反響があり、たくさんの応援メッセージをもらえました。この時、ビジネスと並行して猫のための支援もできることに気づいたんです。

それからは、殺処分されてしまう猫の保護団体のお手伝いをするようになりました。WEBサイトを作ったり、寄付を集めるときの見せ方を工夫して、一般の人にも分かりやすく伝わるようにしていきました。

すると、次第に現状の課題が見えてきました。保護団体の人たちは想いはあるのですが、活動費用がなく無料のボランティアがほとんど。そのため、お金が回らずに疲弊してしまっている人も多くて、これでは継続的な活動にならないと感じてしまったんです。

また、子猫に比べて大人の猫のもらい手は圧倒的に少ないことも分かってきました。実際には、大人の猫のほうが初心者には飼いやすいのですが、触れ合う場所がないので、そのことに気づけない人も多かったんです。

そこで、猫と触れ合う場所として猫カフェを作り、かつそこが自走できる仕組みを作ることにしました。パン屋で商業モール内に実店舗を出した時期もあったので、その経験も活かせると考えたんです。

2022年2月22日までに猫の殺処分をゼロに

現在は、岐阜市、大阪の心斎橋、東京の御茶ノ水の3つの場所で、自走型保護猫カフェ「ネコリパブリック(ネコリパ)」を運営しています。寄付はもちろんありがたいことですが、それだけでは継続した仕組みにならないので、猫カフェの料金やグッズ販売の売上で、自走できることを念頭に置いています。これまで会社を経営してきた力が生かされていますね。

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大阪の猫カフェ「ネコリパブリック(ネコリパ)」

大阪の猫カフェ「ネコリパブリック(ネコリパ)」

ネコリパでは保護団体さんなどから引き受けた猫と触れ合うことができ、気に入った猫がいれば里親になることもできます。ただ、ここにいる猫たちは、一度悲しい思いをしてきた子たち。二度不幸にしたくないので、最期まで面倒を見てくれる方であるか審査も行っています。

また、ネコリパでは猫に興味を持つ人を増やすために、ヨガ教室や映画の上映会など、猫とは関係のないイベントも行っています。イベント目的で来た人に猫と触れ合ってもらい、猫好きを増やす啓蒙の場所でもあるんです。もちろん、ネコリパだけにこだわらず、様々な場所でイベントを開催したり、「ネコリペーパー」という猫の新聞を出すことによって、広く活動を知ってもらうこともしています。

河瀬さんが発行人の「ネコリペーパー」

河瀬さんが発行人の「ネコリペーパー」

私たちは、2022年の2月22日までに、日本での猫の殺処分をゼロにすることを目標にしています。現在は年間10万匹ほどの猫が殺処分されていますが、理論的には10万人の飼い主が増えたら、無くすことができます。

日本の猫は元来愛玩動物だったこともあり、人間と一緒に暮らさないと生きられない生き物。野良に放たれても野生化しませんし、寿命も飼い猫の1/5程度。そんな猫を増やさないために、飼い主を増やしていけたらと考えています。

また、それだけでなく、野良猫を増やさないことも同時に必要です。そのため、「TNR地域猫活動」というものを行っています。これは、野良猫を捕獲(Trap)して、避妊や去勢して中性化(Neuter)し、元の場所に戻す(Return)活動です。

猫は1年に4回出産できるので、そのまま放置しておくと、1年で50匹ほども野良猫が増えてしまいます。しかも、子猫は2時間毎にミルクを上げる必要があり、保護団体にとっても負担が大きいため、保健所に送られやすいんです。

殺処分されるためだけに生まれる悲しい命を増やさないために、TNR地域猫活動は必要なんです。実際、ドイツでは野良猫を見つけたら必ず通報する仕組みがあり、その結果、殺処分もゼロなんです。

また、TNRされた猫達は、間違えて何度も避妊、去勢をされないように、その印として耳をカットされます。そして、一代限りの命を全うしています。こういった、一般の人にはあまり知られていない情報を発信するのも、私たちの役目だと考えています。

目標を達成するため、ネコリパは2020年までに全都道府県に開きたいと考えています。岐阜に1店舗目を開いてから、予想していたよりも多くの人に賛同してもらえ、1年で大阪と東京にも店舗を開くことができました。これからも、同じ想いを持つ人達と一緒になり、猫のための支援活動をできたらと思います。

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another life記事提供元:猫の殺処分ゼロの社会を!
自走できる保護猫カフェの仕組み。
アナザーライフ作成日:2015年08月28日
https://an-life.jp/article/642

里親探しの自走型猫カフェ「ネコリパブリック」を岐阜・大阪・東京3ヶ所で展開。また、ベーグル、スコーン、カヌレ、ネコ雑貨の通販「エル・クアトロ・ギャッツ」も運営。

取材・文・撮影/another life.編集チーム

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