フランスをはじめ世界が注目する日本のマンガカルチャー
日本から世界にマンガの魅力を発信する漫画家 谷沢直さん

フランスをはじめ世界が注目する日本のマンガカルチャー 日本から世界にマンガの魅力を発信する漫画家 谷沢直さん

『愛天使伝説ウェディングピーチ』など、世界でも高い評価を得ている人気作品を手がけてきた漫画家谷沢直さん。これまでドイツ、アメリカ、デンマークなど、各国のイベントでマンガの描き方をレクチャーするワークショップなどのイベントに参加し、日本のマンガカルチャーを広める活動を行ってきました。そんな実績から現在はマンガスクール中野で海外の生徒たちに日本のマンガについて教えています。今回は、そんな谷沢先生の世界を見据えた取り組みについてご紹介します。

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「小さい頃からマンガが好きで、漠然と“漫画家になれたらいいな”と思っていました。それで高校生くらいから漫画賞への投稿をはじめて、大学卒業後に藤子不二雄賞で入賞し、漫画家としてデビューしました。もともと少女マンガには興味がなかったのですが、たまたま『ぴょんぴょん』という女の子向けの児童向け漫画雑誌でコロコロコミックみたいな作品をやりたいという編集の方に声をかけていただき、それで少女マンガを書くことになりました。私が代表作である『ウェディングピーチ』を描くことになったのは、それから『ちゃお』に移籍してからのこと。セーラームーンの脚本を手がけた富田祐弘さんが『ウェディングピーチ』の企画を小学館に持ち込み、それで『ちゃお』編集部から私に声がかかりました」

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『ウェディングピーチ』は連載開始以降多くの読者の心をつかみ、ドイツなど世界数カ国で翻訳されアニメでも放送されるようになります。谷沢さんは順調に漫画家としての実績を重ねていきますが、担当者が変わったことで方向性の違いを感じ、小学館の連載を終了することになります。そこから2年間、同人誌を描きながら「次は同世代に向けたマンガを描きたい」といろいろと構想を練っているうちに、ドイツの出版社からイベントへの出演依頼が舞い込んできたそうです。

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当時英語を話せなかった谷沢さんは、1年ほどかけて英語を勉強しなおし、ドイツでのイベントを成功させます。それを皮切りにアメリカやデンマークからもワークショップなどのイベント出演依頼が寄せられるようになり、海外での実績を重ねていったそうです。その中でも一番印象に残っているのが、ドイツのフランクフルトブックフェア。フランスで活躍するユーゴスラビアのアーティストと一緒にオーディエンスの前で同じテーマで右と左から同時に話を描いていくCOMANGA(コオペレーションマンガ)、「EAST MEETS WEST」を手がけたことだそうです。不思議の国のアリスをモチーフにしたヒロインがいろんなタッチのマンガの世界に迷い込み、最後は共作しているアーティストの絵と入れ替わる、そんな不思議な世界を再現したパフォーマンスが、オーディエンスから好評だったとか。

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そんな海外での実績が評価され、谷沢さんは以前から参加していたコミティアの代表から「実は新設の漫画学校が外国人向けに講師を探しているんです。谷沢先生は英語も話せてワークショップの経験もあるので、ぜひやってみませんか」と声がかかります。「最初は戸惑いましたが、時間もあたので引き受けることにしました」と谷沢さんは当時を振り返ります。「あのまま小学館で描き続けていたら、また違った人生になっていたかもしれませんが、連載を終了したおかげでたくさんの出会いがあり、オンリーワンの存在になれました。外国人に英語でマンガを教えている講師なんて、日本に私ぐらいしかいませんから」

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「外国人と日本人ではマンガの読み方にハンデがあるんです。日本人はこちらが意図した8割を読み取ってくれるのですが、欧米人は6程度しか読み取ってくれない。まずは、マンガの正しい読み方を生徒に理解してもらって、それを自国で広めていってもらえれば嬉しいですね」外国人のマンガの受け取り方について、谷沢さんはこう語ります。フランスのコミックであるバンド・デシネは小説の挿絵のような見せ方で能動的に読んでいく必要があるのに対し、マンガは映画のように動きがスピーディーでダイナミック。見開きやコマ割にも工夫があり、バンド・デシネとは似て非なるものだと谷沢さんは言います。

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そんな谷沢さんのもとにはフランスやタイなど、世界各国からマンガを学びたいという生徒さんが連日のように訪れます。フランスでマンガ学校を経営する方から日本のイラストレーターの絵を再現したいという方、そして観光の一環で日本のマンガを体験したいという方まで、その目的は様々ですが「英語×マンガ講師」という独自のポジションを確立している谷沢さんに指導を求める外国人は後を絶ちません。「日本のマンガはあらゆる世代に向けたテーマのものがありますが、ヨーロッパをはじめ世界で翻訳されているマンガは10代に向けたものがほとんど。せっかくマンガに触れていたとしても、ある年を境にマンガから卒業してしまう人もたくさんいます。世界でマンガを読む層の底上げにつながる草の根活動をこれからも続けていきたいと思います」そんな谷沢さんのマンガの魅力を世界に広める挑戦は、これからも続きます。

1989年に『ゲンゴロウ参る!』で第14回藤子不二雄賞で入賞を受賞。その後、同作が「別冊コロコロコミック」で20号に掲載され、デビューを飾る。その後、「ぴょんぴょん」に移籍し、少年マンガから少女マンガを活躍のフィールドへ。「ちゃお」では代表作である『愛天使伝説ウェディングピーチ』を手がけ、ドイツをはじめとする海外でも同作が翻訳され、アニメとしてもオンエアされるほどの人気に。現在は、マンガスクール中野で、フランスをはじめ海外の生徒たちに英語でマンガの描き方をレッスンする人気講師として活躍中。

取材・文/田尻亨太  撮影/小松正樹

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