家元の娘に生まれて
2人の大和撫子が茶道を通して伝えたいこと
島村満穂さん 小堀優子さん

家元の娘に生まれて2人の大和撫子が茶道を通して伝えたいこと島村満穂さん 小堀優子さん

いいね! JAPAN編集部の中村洋太です。

街に溢れるカフェ、喫茶店。小さい頃は家でお茶ばかり飲んでいた自分も、大学生、そして社会人になり、気付いたらコーヒーばかり飲むようになっていました。日本茶はときどきコンビニで買うくらいで、温かい煎茶となると実家に帰ったときしか飲みません。

そんなぼくが、あらためて日本茶の存在を意識したのは、つい最近のこと。ネットで記事を読んだのがきっかけで、ユニークな活動をする煎茶道の家元のご令嬢と知り合いました。

そのことを知人に話したところ、「それなら私も中村くんに紹介したい人がいる」と引き合わせてくれたのが、ラクロスの元日本代表選手でもある、茶道の家元のご令嬢でした。

煎茶と抹茶。別々の道を歩みながらも、「茶道の魅力を広めたい」という共通する想いを持った2人にこのタイミングで出会ったのも、きっと偶然ではないのでしょう。今回はおふたりをゲストに迎え、それぞれの活動やお茶に対する想いについて伺いました。

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鼎談に先立ち、小堀さんがお抹茶を点ててくださいました。抹茶には様々な効用がありますが、「リラックス効果」もそのひとつ。「お先にいただきます」「たいへん結構です」「ごちそうさまでした」。丁寧に点てていただいたおいしい抹茶をゆっくりといただき、和やかな雰囲気になったところで、会話が始まりました。

機内でもお抹茶を点てます!

中村洋太(以下、中村) 本日はよろしくお願いいたします。では、まずは島村さんから、簡単に自己紹介をお願いできますか。

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島村満穂(以下、島村) 一般財団法人煎茶道三癸亭賣茶流の広報を務める島村満穂と申します。私は実家のある広島と東京を行き来しながら、煎茶道の普及活動を行っています。広島では家元のサポートと財団の仕事、東京では六本木ヒルズと目黒でイベントを開催したり、『テーブル煎茶』という個人のプライベートサロンのレッスンを行ったりしています。

中村 ありがとうございます。続いて小堀さん、お願いします。

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小堀優子(以下、小堀) 遠州流茶道の小堀優子と申します。遠州流とは、江戸時代初期に将軍家茶道指南役となり、総合芸術家として活躍した大名茶人・小堀遠州を流祖とする茶道の流派です。私の父が13代目の家元にあたります。私は大学を卒業してから、遠州流の茶道の勉強をしつつ、広報活動などをしていて、色んな人に茶道を伝えています。

中村 ありがとうございます。今まで「茶道=抹茶」というイメージがありましたが、煎茶道というのもあるんですね?

島村 そうです。

小堀 煎茶道には、どのくらいの流派があるんですか?

島村 全国には35流派くらいあって、お水が綺麗な土地、京都や静岡、北陸などに多いです。小堀さんも、普段から煎茶を飲まれますか?笑

小堀 はい、普通に飲みますよ。

中村 逆に、抹茶もお稽古以外で飲まれたりしますか?

小堀 毎朝のミーティングでも飲みますし、私はラクロスをやっているので、練習後にグラウンドの横でも飲みます。あと、飛行機に乗るときに茶箱を持っていって、機内でもお抹茶を点てます。

島村 飛行機でも!?笑

中村 本当に生活の一部になっているんですね。

機内にも持ち込むという小堀さん愛用の茶箱

機内にも持ち込むという小堀さん愛用の茶箱。

現代風にアレンジした「テーブル煎茶」

中村 島村さんは、大学を卒業されて、すぐに煎茶の道へ?

島村 いえ、大学卒業後は化粧品会社や銀行で働いていました。現在の仕事に就いたのは3年ほど前からです。財団から手伝ってほしいと声がかかり、私も新しいことに挑戦してみたいという気持ちになっていた時期だったので、良いタイミングでこの世界に入ることができました。でも、事務をしているだけでは発展性がないなと感じ、「何か行動しなければ!」という不思議な感覚が生まれてきました。まずは「広報」という肩書きに変えイベントを開催するようになりました。その中で「煎茶道の認知度の低さ」や「茶道が格式高いというイメージ」を実感し、それなら若い方でもカジュアルに親しみやすい「テーブル煎茶」というネーミングにして、間口を広げる活動をしようと意識するようになりました。

「テーブル煎茶」で使う茶器も島村さんがプロデュースしたもの

「テーブル煎茶」で使う茶器も島村さんがプロデュースしたもの。

小堀 さきほどお話の中に出てきた「テーブル煎茶」というのは、どのような活動なのですか?

島村 以前は畳の部屋が当たり前にあった日本の住宅ですが、時代は変わり、テーブルと椅子で生活するようになりましたよね。「テーブル煎茶」は、テーブルと椅子で行うお点前です。「テーブル煎茶」はカジュアルで若い人にも親しみやすいですし、海外でお点前を行う際にも非常に喜ばれます。

スポーツに通じる茶道の心

中村 小堀さんは、大学からラクロスを始められたんですよね。

小堀 はい。高校までは剣道をやっていたんですけど、姉が大学でラクロスをやっていた影響で、私も始めました。社会人一年目のときに日本代表に選ばれて、カナダで行われたワールドカップに出場しました。

ラクロスをする小堀さん。グラウンドに立つとまるで別人に

ラクロスをする小堀さん。グラウンドに立つとまるで別人に。

島村 大学から始めて日本代表って、すごいですよね。

中村 現在も社会人チームで続けられているそうですが、茶道とはどのように両立させているんですか?

小堀 今は週末にラクロスの練習や試合があり、平日に茶道の仕事をしています。

島村 ラクロスと茶道って、大きくかけ離れた分野のものだと思いますが、茶道の経験がラクロスに生きたことってありますか?

小堀 いっぱいありますね~!

島村 いっぱいあるんですか!意外です(笑)。たとえばどんなものですか?

小堀 たとえば、「あ・うん」の呼吸ですかね。茶道を教えていると、経験者の方だけでなく、初めての方もいらっしゃいます。だから、「こういう方にはこの部分から伝えないとわかりにくいかな」とか「この方だったらこの説明でも理解してもらえるな」とか、その人の知識や経験によって対応を変える必要があります。また、お茶室の裏側で控えているときは、障子の裏から会話やお点前の音を聞いたりして、今お茶を召し上がっているのか、お菓子を食べているのか、要するに相手のことを察するんですね。

それってラクロスでもすごく大切なことなんです。味方にとって絶妙なタイミングでパスを出すとか、敵の様子を見てパスを予測するとか、相手の心理を察するという部分では、茶道をやっていてよかったなと思いますね。逆にラクロスの経験が茶道に影響を与えることもありますし。

あとは、スポーツにおいて茶道から学んだ「竹の心」というのを大切にしているんですけれど、竹というのは風が吹けばなびき、雪が積もればしなり、雪が解けるとまたまっすぐ上に伸びていきます。絶対に折れないんですね。私はチームでキャプテンをやっていたので、立場的にも決断を迫られるシーンが多いので、そのときに「竹の心」を思い出して、どんなときでも竹のように状況に応じ、柔軟に対応しようと心がけています。

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今度は島村さんが煎茶をいれてくださいました。煎茶には「お客さまに安らぎを与え、楽しい会話を生み出す」という効果があるそうです。それにしても、普段飲んでいるコンビニのお茶と全然味が違うので驚きました。とろんとして、出汁のような味?「コンビニのお茶は私も飲みますが、こうしていれる煎茶とはまったく別の飲み物として捉えています笑」と島村さん。

「和」のケータリング事業で「応接の文化」を発信

中村 島村さん、今後の取り組みについて聞かせていただけますか。

島村 実は今冬から、「Catering Sencha」という新しいサービスを展開する予定です。

小堀 どんなサービスなんですか?

島村 和のケータリングサービスです。お客様のご希望に合わせて、和菓子ビュッフェと季節の煎茶をご提供させていただきます。イベント当日は、ただ和菓子を置いて終わり、というのではなく、空間装飾はもちろんのこと、プロがお客様へ煎茶をお出しし、煎茶道の点前をライブで行います。準備から撤収作業まで一貫して行いますので、企業様もストレスなくイベントを開催することができます。大切なお客様との時間がさらに密なものとなり、イベントのテーマがより引き立つ空間を創作し、「世界に誇る応接の文化」の発信に努めていきます。

小堀 素晴らしいですね。お稽古事だけではなく、イベントをしたり、企業に出向いたり、様々な工夫をして知っていただく機会が増えるといいですよね。

代表選手は、日本文化も背負って世界に出てほしい

中村 小堀さんは、どんな想いを持っていますか?

小堀 私は2013年に日本代表としてワールドカップに出場いたしました。そのときに、日本代表として世界で戦っているのであれば、日本人は日本文化を背負ってというか、理解したうえで、真の日本人として戦ってほしいなという想いが芽生えました。ワールドカップ期間中に海外の方にお抹茶を点てて差し上げたりすると、非常にリスペクトされるんですね。

抹茶というのは日本文化として世界中の人が知っているものなので、日本人の選手たちもそのことを理解してほしいなって思います。それで、様々なスポーツの日本代表選手たちを集めて「アスリート茶会」というのを開いたり、15歳以下の女子サッカー育成選手たちに茶道を教えたりもしました。今後もそのような活動を続けていきたいです。

中村 今日はありがとうございました。おふたりのさらなるご活躍、楽しみにしています!

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一般財団法人煎茶道三癸亭賣茶流 3代目家元である島村仙友の娘として幼い頃から煎茶道に親しむ。2007年東京女子大学卒。現在は三癸亭賣茶流 広報として東京と広島を中心に活動中。今年春にテーブル専門の煎茶道教室「MY SENCHA SALON」をOPEN。他にはオリジナル茶器「MY CHAKI」のプロデュースや和のケータリングサービスを展開。流派が大切にする「いつでも、どこでも、だれでも出来る煎茶道」をもとに、世界に誇る応接の文化を発信している。
MY SENCHA SALON:http://www.my-sencha-salon.com/

遠州茶道宗家 13世小堀宗実家元の次女として生まれる。幼少より祖父12世宗慶宗匠と父宗実家元より、茶道の手解きを受ける。学習院大学法学部卒業。在学中よりラクロスで活躍し、日本代表にも選出。平成22年より、父宗実家元の内弟子修行を経て、現在は家元の膝元で茶道の普及にあたる。遠州流茶道ドキュメンタリー映画『父は家元に』に出演、ナレーションも務める。個人ブログも展開中。
綺麗さび 〜遠州流とわたし〜:http://blog.jisin.jp/kobori/

取材・文/中村洋太 撮影/小松正樹 写真提供/島村満穂、小堀優子

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