おいしい桜餅を求めて、桜舞う東京をサイクリング!
「ツール・ド・桜餅」

おいしい桜餅を求めて、桜舞う東京をサイクリング!「ツール・ド・桜餅」

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桜餅について、何も知らなかった

「皆さん、知っていましたか? 桜餅には、『長命寺桜餅』と『道明寺桜餅』の2種類があるんですよ」

「へー、知らなかった」

「どう違うの?」

朝10時、春日駅でレンタサイクルを借り、いよいよ「ツール・ド・桜餅」がスタート!

朝10時、春日駅でレンタサイクルを借り、いよいよ「ツール・ド・桜餅」がスタート!

44日(土)、春日駅に集まった「ツール・ド・桜餅」参加者の面々に参考画像を見せながら、ぼくは当然とばかりに、その2つの違いを解説していた。だが、恥ずかしながら、ぼくも1ヶ月前は、参加者たちとなんら変わらない状態だったのだ。

『1ヶ月前』とは、都内某所で「いいね! JAPAN」の小田編集長と打ち合わせをしていたときのことだ。

4月に『ツール・ド・和菓子』をやりたいです。自転車で都内の和菓子の名店を巡ります」(中村)

「そしたら、桜の季節だから、『桜餅』縛りでいこうよ! 桜餅を食べ比べるんだよ!」(小田)

「いいですね!『ツール・ド・桜餅』だ!」(中村)

「それだ! ほら、桜餅って、『長命寺桜餅』と『道明寺桜餅』があるじゃない、それをさ…」(小田)

「え、ちょっと待ってください。ちょうめいじ……? なんですか、それ」(中村)

そんな常識的なことすら知らなかった。でも、大丈夫。知らないことを知ることが、最初の一歩なのだ。ぼくは勉強を始めた。

見慣れているはずの東京の景色も、自転車からはまた違って見える

見慣れているはずの東京の景色も、自転車からはまた違って見える

「長命寺」と「道明寺」 桜餅の歴史と種類

桜餅が生まれたのは、江戸時代のこと。享保2年(1717年)、8代将軍徳川吉宗が隅田川沿いに桜を植えさせたことで、花見客で賑わうようになった。しかし、大変だったのは桜の葉の処理だった。向島・長命寺の門番をしていた山本新六は、「この桜の落葉を何かに生かせないか」と考え、塩漬けにし、餡を包んだ皮に巻いて試しに露店で販売してみたところ、これが大いに繁盛し、後に長命寺の中で桜餅を売るようになったそう。今でも向島の「長命寺桜もち」では、当時から変わらぬ味を受け継いでいる。

長命寺桜餅が江戸風、関東風と言われるのに対し、道明寺桜餅は上方風、関西風と言われる。こちらは小麦粉ではなく、「道明寺粉」という材料で皮を作っている。道明寺粉は、大阪府藤井寺市の道明寺で最初に作られた、水に浸し蒸したもち米を干して粗めにひいた食品である。もともとは保存食として使われたそうだ。道明寺桜餅は、団子状に丸くして餡を包んだもので、ツブツブの食感が残っている。それが長命寺桜餅との違いだが、塩漬けの桜の葉で包まれているという点は、共通している。

銀座へと向かう途中、皇居前広場では、ちょうど桜が満開を迎えていた。

銀座へと向かう途中、皇居前広場では、ちょうど桜が満開を迎えていた。

1 . 銀座甘楽(銀座) 創業10年とは思えない風格

最初に訪ねた「銀座甘楽(かんら)」は、帝国ホテルの脇を過ぎ、銀座コリドー通りに入ってすぐのところにあった。何十年も前からのお店だと思っていたら、看板娘の水越さん曰く、意外にもまだ創業10年とのことで、その堂々とした風格にびっくりした。それなのに、もう10店舗もあるのだ。確かな味が、店の急成長を支えている。

1軒目は銀座「甘楽」。ショーケースに並ぶ和菓子に胸が躍る。どれもおいしそう

1軒目は銀座「甘楽」。ショーケースに並ぶ和菓子に胸が躍る。どれもおいしそう

「うちの小豆は、北海道の留寿都にある契約農場で栽培しています」

そのこだわりの小豆を使って、店舗奥の工房で餡を炊いている。看板商品は豆大福や、もちっとした食感がおいしい銀六餅だが、やはり今回のお目当ては桜餅。長命寺か道明寺かで迷ったが、見た目がかわいらしい「紅白道明寺」をチョイス。ピンクの餅にはこし餡が、白い餅には白餡が入っていた。小ぶりで食べやすく、餡はどちらもおいしい。きっと手土産に喜ばれるだろう。

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長命寺(右)と紅白道明寺(左)。白い方には白餡が入っている。ひと口サイズで食べやすい

長命寺(右)と紅白道明寺(左)。白い方には白餡が入っている。ひと口サイズで食べやすい

2 . 芝神明 榮太樓(大門) 黒糖を使用した「夜桜餅」が絶品

増上寺近くにある「芝神明 榮太樓」は、明治18年(1885年)創業、今年130周年を迎える老舗だ。日本橋にある「榮太樓總本鋪」からのれん分けされた店で、現在のご主人・内田吉彦さんは4代目。店先の題字は、先代の戦友だったという岡本太郎に書いてもらったものだという。

気さくなご主人・内田さんが、お店の歴史やこだわりを丁寧に説明してくれた

気さくなご主人・内田さんが、お店の歴史やこだわりを丁寧に説明してくれた

「うわあ、たくさんいらっしゃいましたね。みなさん自転車で?」

ご主人は気さくで、人情味溢れる人物だった。ここにも「長命寺」と「道明寺」があったが、もうひとつ、「夜桜餅」という商品が並んでいた。

「これはね、黒糖を使ってるんですよ。皮にも、餡にも」

これが絶品。黒糖の風味は強すぎず、遅れてふんわりとやってくる。黒糖を使った桜餅は珍しく、春のイチ押しの手土産になりそうだ。店の看板商品は、文豪・尾崎紅葉が名付け親の「江の嶋最中」で、1902年に誕生したもの。アワビ、カキ、ホタテ、アカガイなどの貝殻をかたどったひと口最中で、中の餡も粒餡、白餡、ゴマ餡、こし餡、柚子餡とすべて異なっている。

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2軒目は創業130年の老舗、大門の「芝神明 榮太樓」。ほのかに黒糖が薫る夜桜餅(左)が絶品

2軒目は創業130年の老舗、大門の「芝神明 榮太樓」。ほのかに黒糖が薫る夜桜餅(左)が絶品

桜をバックに記念撮影。サイクリングを通して、メンバーにも一体感が生まれてきた

桜をバックに記念撮影。サイクリングを通して、メンバーにも一体感が生まれてきた

3  .赤坂青野(赤坂) スティーブ・ジョブズが愛した味

東京タワーと桜を眺めながら、増上寺の脇道を登っていき、そのまままっすぐ進むと六本木に出た。昼食を取り、後半戦がスタート。3軒目は、明治32年(1899年)創業の「赤坂青野」だ。ここでは店長の武田さんから面白い話が聞くことができた。

3軒目は赤坂の老舗「青野」。粋を感じる店内には、温かいお茶も用意されていて嬉しい

3軒目は赤坂の老舗「青野」。粋を感じる店内には、温かいお茶も用意されていて嬉しい

20092010年頃、かのスティーブ・ジョブズがこの店の和菓子をとりわけ気に入り、カリフォルニアに取り寄せていたというのである。

「来店した依頼人は、『カリフォルニアに和菓子を届けてほしい』と言うのですが、『届け先を教えることはできない』と言うのです」

店側は2週間おきに、12000円の詰め合わせの商品を半年間送り続けていたそうで、後に依頼人から、その相手がスティーブ・ジョブズだということを告げられたのだとか。そんな話に興奮し、しばらく桜餅が用意されていることを忘れてしまっていた。先に席に着いていた参加者の友人たちは、名物の「赤坂もち」や草餅を食べていて、「おい、今日は桜餅縛りと言っただろ(笑)」と目線でツッコミを入れた。ここはもちろん、桜餅だっておいしいのだ。ジョブズのことを考えながら、道明寺をいただいた。

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道明寺(左)と長命寺(右)。スティーブ・ジョブズも、この春の風物詩を味わったのだろうか

道明寺(左)と長命寺(右)。スティーブ・ジョブズも、この春の風物詩を味わったのだろうか

4 . 五十鈴(神楽坂) なめらかな餡と塩加減が絶妙

赤坂御用地沿いを走り、外堀通りに出ると、上智大学横の桜並木がとにかく美しかったので、少し遠回りだったが、そちらを走ることにした。四ツ谷、市ヶ谷を通り、神楽坂へ。本日最後の店は、早稲田通りに面する「五十鈴(いすず)」だ。

最後の4軒目は、神楽坂の「五十鈴」。お土産に長命寺を購入する参加者

最後の4軒目は、神楽坂の「五十鈴」。お土産に長命寺を購入する参加者

広報担当の相田さんが、素晴らしい笑顔で「お待ちしておりました」とご挨拶してくださった。神楽坂でイベントがあったらしく、通りはいつも以上に賑わっていた。五十鈴さんも客足も絶えなかったのだが、我々を最高の気配り心配りで迎えてくれ、もうそれだけで疲れを忘れてしまった。名物の甘納豆を試食しながら待っていると、長命寺桜餅が登場。

「道明寺は売り切れてしまいましたけど、長命寺もおすすめですよ」

桜の葉の塩加減が絶妙で、ひと口で気に入ってしまった。十勝産の小豆を使った餡もなめらかで口当たりが良い。餡はお店の奥の工房で朝6時から炊いているそうだ。家族へのお土産に購入し、お店を後にした。_DSC7154

「五十鈴」の長命寺。今回は売り切れてしまっていたが、次回は道明寺も食べたい

「五十鈴」の長命寺。今回は売り切れてしまっていたが、次回は道明寺も食べたい

「ツール・ド・桜餅」ついに完走!

夕方4時半、16kmの道のりを走り抜き、見覚えのある春日交差点に戻ってきた。「そんなに走れるかな」と心配していた参加者たちも、なんなく走り切っていた。女性でも、意外といけてしまう。サイクリング×和菓子×桜という、年に一度しか楽しめないイベントを存分に満喫し、みんな笑顔で家路へとついた。

最後に、帰り道が同じだったので、ぼくと同じく「いいね! JAPAN」キュレーターである樋口亜希ちゃんに聞いてみた。

「今日食べたなかで、何が一番好きだった?」

「えっと、、、『赤坂青野』の、焼芋羊羹かな」

と、はにかんだ笑顔がたまらなかった。いったい、桜餅はどこへいったのだ。。。

そんなオチもあったが、「ツール・ド・桜餅」は無事に幕を閉じた。桜餅は味も形も店によってそれぞれで、どこもおいしかった。あとは好みの問題である。ぜひ自分で足を運び、「自分の好きな味」を見つけ出してほしい。個人的には、黒糖を使った「芝神明 榮太樓」の夜桜餅がヒットした。411日(土)までは、4店舗とも桜餅を販売予定だそうなので、ぜひ今週、駆け込み的に訪ねてみてはどうだろう(ただし、状況によっては早めに終了となる場合もあるため、念のため事前に電話でご確認を)

終わってみると、味の記憶よりも、お店の方の温かさがいつまでも残っている。和菓子屋さんを訪ねることの良さは、そんなところにもあると思う。店員さんに「これもおすすめですよ」と言われ、ついつい別の商品を買ってしまうのが楽しさのひとつである。そうした積み重ねが、きっと自分だけの「お気に入り和菓子リスト」を築いていくことだろう。

今回はこれにて終了。ご対応いただいた各店の方々、参加者の皆様、関係者各位に深く感謝を申し上げます。

また次回の「ツール・ド・和菓子」の開催をお楽しみに!

今回ご紹介したお店

銀座 甘楽 http://www.kanra.co.jp/
東京都中央区銀座6丁目2番地先
03-3573-2225
定休日なし

看板娘の水越さんと。

看板娘の水越さんと。

芝神明 榮太樓 http://www.shiba-eitaro.com/
東京都港区芝大門1-4-14
03-3431-2211
定休日:日曜、祝日(8月のみ土曜休)

4代目の内田吉彦さんと。

4代目の内田吉彦さんと。

赤坂青野 赤坂本店 http://www.akasaka-aono.com/
東京都港区赤坂7-11-9
03-3585-0002
定休日:日曜、祝日

店長の武田さんと。

店長の武田さんと。

五十鈴 http://isuzu-wagashi.co.jp/
東京都新宿区神楽坂5-34
03-3269-0081
定休日:日曜、祝日

広報の相田さんと。

広報の相田さんと。

ツール・ド・桜餅 
参加者/中村洋太、沖玲奈、加藤彩子、川本達也、樋口亜希、田中麻喜子
撮影/小松正樹

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