一花一葉”に学び、“花とのひととき”を育む。
『花育〜国産花きイノベーション推進事業〜』

一花一葉”に学び、“花とのひととき”を育む。『花育〜国産花きイノベーション推進事業〜』

花を飾り愛でる。日本のいけばなの歴史は、遠く室町時代より始まったとされています。現在、日本の花き(花卉)の品種開発技術は世界最高レベルとされていますが、市場では輸入に頼る割合が増加傾向にあります。
平成26年の世帯別の花きの購入調査では、60代の平均が約13,500円/年であるのに対し、20代の平均は約1,400円/年と大きく差が開き、若い人の“花離れ”も心配されています。
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平成26年12月、花きの産業と文化の振興を図るため、「花きの振興に関する法律」が施行。その目的を達成するため、平成26年度から「国産花きイノベーション推進事業」が新たに予算措置されました。全国47都道府県で花き関係者による地域協議会が主体となり、国産花きの生産・供給体制の強化、輸出および需要の拡大に向けた取り組みが行われています。

その取り組みのひとつが、花や緑との触れ合いを通じて子どもたちの優しさや美しさを感じる気持ち育む『花育(はないく)』。花き文化の将来の担い手である子どもたちに、いけばなやフラワーアレンジメント、花きにまつわる行事などを教えることを通じて、花きの伝統文化の継承、新たな文化の創造が進められています。

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「農林水産省では、国産花きの生産振興、輸出や需要の拡大とともに、花育を推進しています。花育を全国に普及させるため、国産花きイノベーション推進事業では、これまでの花育実践者の育成研修、実践者マニュアルの作成に加え、小中学校等での花育の実施に対して支援を行っています。子どもだけでなく大人も花に触れる機会の少ない人が多く、花育の普及を通して、身近に花や緑があることの心地良さ・楽しさを広めていきたいです」(農林水産省・園芸作物課/辻聡夫さん)

いけばなやフラワーアレンジメントなどを通して、子どもたちの”豊かな心 ”を育くむために、さまざまな花育活動が実施されています。その中で、早くから小学校での花育授業を実践してきたNPO法人感性の教室では、全国花育活動推進協議会発行の花育実践者マニュアルに掲載された「一花一葉」「みんなで、クラスの花を生けてみよう」をはじめ、多くの花育授業のプログラムを開発しています。
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「私たちは、16年にわたり、美術、音楽、環境、コミュニケーション、情報など、様々な分野の授業協力を行い、子どもたちの成長と学校を応援する活動をしています。中でも、花育の授業は、子どもたちが、花を通して命を知り、みんなで美しい思い出を共有できる素晴らしい授業だと思います。小学校の公開授業では、保護者や地域の方々も参加して、温かな花の輪が広がります。子どもたちと花との出会いの場が増えていくことを願っています」(NPO法人感性の教室・理事長/加藤潤子さん)

加藤さんは、花育授業を通して育まれることとして、次のような観点をあげています。

<花育授業を通して育まれること>
1.命の繊細さに気づく
2.花の観察を通して、命の不思議さやおもしろさを知る
3.参加した児童それぞれの創造性を育む
4.花を生けることで、生活を豊かに楽しむ方法を知る
5.一人で生ける体験、みんなで生ける体験を通して、それぞれの良さを認め合い、共に創り上げる喜びを知る
6.いけばなを知り、日本の伝統文化への誇りと関心を持つ
7.講師や市場の方々と触れ合い、仕事や働く人への理解と憧れを育む

花育を小学校で実践する花道家の大久保有加さん

花育を小学校で実践する花道家の大久保有加さん

「感性の教室」で長年講師を務め、現在、全国の小学校で花育授業を実践しているのが、花道家(いけばな草月流)の大久保有加さん。
「私が実施する花育のプログラムは、“一花一葉”。多くの花で華やかさを感じる体験よりも、最初の出会いは、まず1本の花としっかり向き合う時間を大切にしています。一本の花、一枚の葉にきちんと向き合うことで、子どもたちの個性を引き出します。自分よりもか弱い命に触れ、関わることで芽生える気持ちや発見、それを表現することが大切なのです」

ペットボトルとクラフトペーパーでオリジナルの花器をつくる。

ペットボトルとクラフトペーパーでオリジナルの花器をつくる。

葉に切れ目を入れたり、思いのままに形をつくる。

葉に切れ目を入れたり、思いのままに形をつくる。

一本の花と、一枚の葉を自分なりにイメージしていけていく。

一本の花と、一枚の葉を自分なりにイメージしていけていく。

花育の実践の場となった柏市立酒井根小学校を訪ねてみました。子どもたちは、“一花一葉”を手渡され、まずはじっくりと観察していきます。そして、葉で花をくるんだり、穴をあけて花をのぞかせたり、思い思いの世界を自由に創っていきます。最後に紙とペットボトルを使った自作花器に花をいけたら、完成です。

同じ花と葉でも、それぞれ個性豊かな「一花一葉」が勢揃い。

同じ花と葉でも、それぞれ個性豊かな「一花一葉」が勢揃い。

「さいしょは、できるか心配だったけど、きれいに生けられてうれしかったです。ガーベラのまん中がフワフワしていることをはじめて知りました。家でもやってみたいです」(小学3年生)

「花や葉っぱがデリケートだということを発見しました。こわれそうで、ビックリしました」(小学4年生)

「ルーペで観察して初めて判ったことがあった。一花一葉でもいろんな世界があって驚いた」(小学5年生)

花にも命があり、一本の花にもたくさんの発見がある。花育の授業を受けた後の子どもたちの思いが伝わってきます。

花育授業を行った柏市立酒井根小学校校長/城川達也さん(左)

花育授業を行った柏市立酒井根小学校校長/城川達也さん(左)

こうした花育の授業や子どもたちの感想に直に触れた柏市立酒井根小学校校長城川達也さんは花育は命の授業であると語ってくれました。
「もの言わぬ花にも命がある。そうした所に花育の魅力はあるんですね。創造的なことを学びながらも優しい気持ちになる。花育は、今の子どもたちに欠けている多くのことが学べるんです。改めて教育現場に足りないものを感じ、また、日本の伝統文化の大切さを感じます」(柏市立酒井根小学校校長/城川達也さん)
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大久保有加さんは、花の消費を世の中の『幸せのバロメーター』と表現します。部屋に花を飾り、花とのひと時をつくる、その手助けをしていくことが花道家としての務めであると語ってくれました。

花道家、草月流師範
一般社団法人ジャパン・フラワー&コミュニケーションズ 代表理事
農林水産省 日本の食を広げるプロジェクト 事業選定審査委員会委員

青山学院大学経済学部経済学科卒。
草月流を家業とする家に生まれる。幼少より祖父 州村公束、母 州村衛香に師事。
1995年論文「時代に根ざす花表現」がいけばな論草月賞受賞、第77回草月展新人賞受賞
いけばな指導、いけばな作品発表のほか、舞台インスタレーション、イベントやセミナーの企画・プロデュース、講演、執筆活動、公立小学校への授業プログラム支援や子供たちへの花育など、いけばなを軸とした幅広い分野で活躍。
2012年3月から半年間、オランダで開催されたフロリアード2012(フェンロー国際園芸博覧会)にて、日本国政府ブースの運営展示のため、農林水産省より派遣される。現在、文芸誌「すばる」(集英社)、雑誌「YUCARI」(マガジンハウス)にていけばな作品とエッセイを連載中。主な著書「1本からできる花あしらい帖」(オレンジページ)、「FlowerⅡ現代日本のフラワー作家80人」(ART BOX)「いまどき和の器」(高橋書店)「色別花束・バイブル」(花時間ムック)など

文/有馬敏浩 撮影/中川カンゴロー、小松正樹 撮影協力/柏市立酒井根小学校、株式会社第一花き

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