全国初、条例を定めて育児休業を取得した
市長だからこそ考えられる これからのまちづくり
いいね!JAPAN編集長 小田実 × 茨城県龍ケ崎市長 中山一生

全国初、条例を定めて育児休業を取得した市長だからこそ考えられる これからのまちづくりいいね!JAPAN編集長 小田実 × 茨城県龍ケ崎市長 中山一生

市長として、全国ではじめて条例を定めて育児休業を取得した茨城県龍ケ崎市の中山一生市長(首長としては東京都文京区成澤廣修区長に次いで二番目)。リーダーが率先することで、市にはどんな変化が起きているのでしょうか。

育児休業取得率ほぼ100%に近い龍ケ崎市の取り組み

小田 まず市長になると決意したきっかけとなった出来事があれば教えてください。

中山 大学を卒業してから最初に仕事に就いたのが国会議員である父親の秘書でした。それ以前から父親の影響もあり、政治の世界に足を突っ込んでいましたが、自分自身の成長に伴って政治に対する思いが変化していきました。

父が引退するにあたって、自分自身がこれからどのようにしていこうかと。選挙にも挑戦しては落選し、挫折を味わったこともありますが、県会議員で当選させてもらいました。

実は、県議会議員の間は市長になるとは思ってもいませんでした。しかし、前市長を勤めていらした串田武久さんの引退表明を聞いて、私が今後どうするかと考えた時に、これからの龍ケ崎市に対する危機感がありました。歴史と伝統に厚みがあり、人々が誇りを持っているのが龍ケ崎。その時は、それが徐々に失っていく実感がありました。誇りを失わないためにも、これまで自分が培ってきたことや勉強をしてきたことを龍ケ崎でやりたい!という思いが湧き上がり市長選に出る決意をしたのです。

小田 そのような強い思いが当選に繋がったのですね。中山市長といえば、市長としては全国ではじめて首長の育児休暇(育児等のための期間を確保する条例)を市議会で可決させ実際に育児のための期間を取得した実績がございます。当時の思いと現状をどのようにお考えですか?

中山 私が市長になってから、2人目の子どもが生まれました。1人目の子どもが生まれたときは県議会議員時代。その時は非常勤で平日に時間をとれたので出産の時にも立ち会いができたんです。ただ、今回は県議会議員時代のようにはいかないなと思ったのです。

改めて勉強し直してみると、育児休業制度がこれからの時代に必要だということが分かります。ワークライフバランスを考える上で、有給休暇になっていないと、取得する方もなかなか取りづらい。社会や職場の風土も、男性が取得しづらい環境があるため、その風土自体を変えていこうとしました。

そこで、市民のみなさんにも現状を知って考えてもらうという意味でも、私が育児休業制度を取得するのは大切なのではないかと考えたのです。

「ファザーリング全国フォーラムinしが パパ首長サミット宣言」の盾を説明する中山市長

「ファザーリング全国フォーラムinしが パパ首長サミット宣言」の盾を説明する中山市長

実は2回に分けて育児休業を取ったのですが、最初の5日は出産の2ヶ月くらい前で、その時は小旅行に行ったりと家族との時間をたっぷり取りました。2回目の休みは帝王切開というのが分かっていたので、予定日前後で2週間取りました。

その期間中に、公務が入ったので仕事をしたのですが、職員に「育休を取っているのに登庁されたら、我々が取りづらいじゃないですか!」と怒られてしまいました(笑)これは反省点ですね。

私が育児休業を取得した後は、他の職員も積極的に休業を取ってくれるようになりました。全国的には5%を目指そうと言っている男性職員の取得率ですが、龍ケ崎市役所はほぼ100%に近いです。今では育児休業を取るのが当たり前な雰囲気になっているのが嬉しいですね。

小田 まさに中山市長効果ですね。実際に取得してみて、育児休業を普及させるにはどんな課題があると感じましたか?

中山 地方の小都市ですから、中小企業が多いんですよね。家族経営など、従業員数が少ないんですよ。そのような場合、彼らにとって育児休業という制度はしっくりきません。まだまだ調整ができていない部分もあるので、民間企業に対しても、盛り上がるような取り組みをしたいと思っています。

私が育児休業を取得したことで、多くの市民の皆様から声をかけてもらいました。中小企業の方からは、励ましの声をかけてもらっています。もちろん反対の声もありますが、趣旨を理解してくださっている実感はありました。

移住者が声を揃えて「住みやすい」と言う理由とは

小田 育児休業制度の取得促進に向け新しい取り組みをされている龍ケ崎市には、全国でも一番だろうと自信を持って言えるものはありますか?

中山 ギネスブックに載っているような世界一や日本一と証明されるものはありませんが、歴史と伝統というのが最も誇れることだと思います。特に撞舞(つくまい)という、関東三奇祭と言われる、とてもスリリングな祭りがあります。神事で日程は決まっていますので、ぜひとも行ってみてください。今は国選択無形文化財になっているので、指定文化財になるために色々活動しています。

関東三奇祭の一つ「撞舞(つくまい)」。高さ14メートルで繰り広げられる伝統の舞 は、毎年7月に開催される「八坂祇園祭」の最後の日に行われる

関東三奇祭の一つ「撞舞(つくまい)」。高さ14メートルで繰り広げられる伝統の舞
は、毎年7月に開催される「八坂祇園祭」の最後の日に行われる

小田 これはぜひ生で見たいです。素晴らしい文化が残っていますね。龍ケ崎市の「いいね!」を3つあげるとしたらなんですか?

中山 龍ケ崎市をPRする立場からすると、龍ケ崎市は住みやすさ日本一と考えています。その中で、3つ自慢できることは、

「豊かな自然、豊かな緑、水、それらが育む食」
「一環したテーマである歴史と文化、新しい文化との融合」
「気候の良さ、災害も少ないという住みやすい環境」

これらを考えると住むためのバランスが日本一なのかなと自負しています。新しく住まわれた方の声を聞くと、口を揃えて、暮らしやすいと言ってくださいます。

座右の銘は「正射必中」。そこに込められた想いとは。

_d3_7244

小田 座右の銘で、正射必中(せいしゃひっちゅう)とあります。この言葉に対してどんな思いがありますか?

中山 これは弓道の言葉であり、正しく射ると必ず当たるという意味です。単純な意味のように感じますが、弓道は、体配、礼儀作法含めて、射るまでのプロセスがとても大切にされています。射った後の納め方も動作としてみられます。つまり、始めから最後までのプロセスを正しくできる人は、結果として当たるという意味ですね。

民主主義もそのプロセスが非常に大事。プロセスがしっかりしていれば、結果も正しいところに導かれていきます。なかなか私の座右の銘に合うものがなかったのですが、この言葉は政治に繋がる素晴らしいものだと思っています。

小田 弓道と和太鼓が趣味、特技ということですが、まさに日本の伝統文化ですよね。

中山 確かに惹かれるものがあったのかもしれませんが、伝統文化を意識してやったわけではありません。和太鼓は、仲間や先輩がやっている太鼓の会があり、知り合いの導きもあってやることになりました。実際やってみると非常に難しい。奥深いものがあり、私は浅い部分でしか太鼓を叩くことしかできていませんが、自分なりに楽しくやっています。

_d3_7202

小田 和太鼓は大きいものを叩くのですか?お祭りでお披露目をしたり……?

中山 何種類もあるんですけど大太鼓も叩きますし、中太鼓も叩きます。お祭りに関しては、練習ができないので本番が練習になっていますね(笑)。太鼓の演奏会の時には、市民の皆さんにも入ってもらって、子どもたちと一緒になって叩きます。定期的にある色々な行事で喜んで叩きに行きますよ。

地元のパワフルの女性たちから始まったコロッケでのまちおこし

小田 龍ケ崎といえば第2回『ご当地メシ決定戦!2014』でグランプリを獲得したコロッケが有名ですが、民間の方で盛り上げよう!となったのですか?

中山 商工会に「女性部」という元気な会がありました。パワフルなおかみさんたちのグループが食の町おこしをやろう!と言ったのがキッカケです。その方々が、15年という長年に渡り、絶えまない活動をやってきたという下地があるのです。

今では「コロッケクラブ龍ケ崎」という会があり、おかみさんたちにインスパイアされた人たちが集まって活動をしています。

コロッケに愛情込めて、一つひとつ丁寧に手作りで

コロッケに愛情込めて、一つひとつ丁寧に手作りで

龍ケ崎のコロッケを代表する「まいんコロッケ」

龍ケ崎のコロッケを代表する「まいんコロッケ」

小田 コロッケで町おこしをスタートした発起人の功績は大きいですね。龍ケ崎市としてはその活動に対して何かしていますか?

中山 市としては、もっと盛り上げていかなければいけないと思っています。日本一を取った時はインターネット投票だったので、私も宣伝マンとして色々な場所でPRをしてきました。

他にはイベントの助成を行っています。日本一になったということもあるので、コロッケ日本一事業に予算をつけてお手伝いをしています。今後も「コロッケクラブ龍ケ崎」の皆さんと一緒になって、ブランド力を強めていきたいと思っています。

今年は龍ケ崎市でコロッケフェスティバルが10月2日(日)に開催されました。「三コロ会」というものがあり、三島と高岡と龍ケ崎の3市でやっています。第1回目が龍ケ崎市だったので、4回目の今年は主催が戻ってきたかたちになります。

第2回『ご当地メシ決定戦!2014』グランプリのトロフィーと「コロッケの国三国の共同宣言記念」盾

第2回『ご当地メシ決定戦!2014』グランプリのトロフィーと「コロッケの国三国の共同宣言記念」盾

小田 もともと三島市や高岡市がコロッケでまちおこしをやっている情報があったのですか?

中山 たまたま三島市と高岡市が盛んにコロッケでまちおこしをやっていたので、仲間入りをさせていただき、宣言をして実施しました。そのおかげもあって、今では3市と色々な面で交流をしています。食べものというのは文字どおり、“食いつき”がいいんですよね(笑)。ありがたいことに多くの方が来てくださいます。

mainimg

関東鉄道佐貫駅から出発する竜ヶ崎線を「フェスティバル公式トレイン」とし、車内のつり革がコロッケに

関東鉄道佐貫駅から出発する竜ヶ崎線を「フェスティバル公式トレイン」とし、車内のつり革がコロッケに

小田 食べ物の力は凄いですよね!(笑)

2020年に向けて。これからの龍ケ崎市が目指すこととは

小田 今は地方創生の流れで、インバウンド施策や移住・定住の促進など各自治体が力を入れております。龍ケ崎市はこの一連の動きでいうと、どういった分野に力を入れているのですか?

中山 移住・定住促進という意味合いでは、龍ケ崎市も人口減少という流れになっているので、その流れをどのように止めて行こうか、いかに傾斜を緩やかにしていこうかというところを求められてると認識しています。

その施策の1つとして、関東鉄道竜ヶ崎線の始発駅となっている佐貫駅の周辺を、移住・定住促進につながるような場所にしたいと思っています。このエリアは人口の伸びが著しかった地区でして、駅、鉄道の持つ力が大きいのです。

_d3_7271

佐貫駅も、今の龍ケ崎市になってから62年が過ぎています。その中で、60年以上前から駅名を自治体名に合わせようという話は何度もありました。その度に、地元の大きな反対運動が起こっています。しかし、期も熟したということで改名することが決まりました。

佐貫駅から新しく「龍ケ崎市駅」ということで、自分たちの駅という意識を持っていただけたらと思っています。駅名改称については、平成31年度の改称を目標として進めています。牛久沼の湖畔に道の駅の整備も、地方創生のメニューの1つに入っています。こちらも佐貫地区同様にリンクして進めていけたらと思っています。

小田 駅名を変更するのに相当な苦労をされた歴史があるのですね。訪日外国人の誘客はどうでしょうか?

中山 龍ケ崎の場合は、外国人の観光客が求めるような場所は、そんなに多くはありません。常に来ていただくためには、農業とかグリーンツーリズムのようなウリとなる部分が必要だと思います。三島市でやっているのが、中国にコロッケを持って行き、売ることで認知を広める逆輸入的なやり方ですが、外国人を呼び込むキッカケにはなるかもしれません。

小田 最後にお聞きします。2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックが1つのターニングポイントとなるかと思います。龍ケ崎市としてどのような動きを考えていますか?

中山 東京オリンピック・パラリンピックの前の年にはラグビーワールドカップがあり、茨城県では国体もあり、大きなイベントが2年連続で続きます。

龍ケ崎は、流通経済大学を筆頭に、全国レベルのスポーツチームをいくつも持っています。その強みを生かしながら、流通経済大学とリンクして、キャンプ地の誘致ができないかと思っています。それはラグビーワールドカップも、東京オリンピック・パラリンピックも同じです。これから本格的に具体的な話を進めていくのが楽しみです。

あとは「龍ケ崎市 道の駅」も、国体の年に合わせ整備できるように計画しています。都心部から来られたお客様の最初の道の駅になります。龍ケ崎の玄関になりますので、そこから県内へ案内していくコンセプトの駅になればいいなと思っています。

小田 これからも育児休業に続く市長自らが率先して実践する施策で、龍ケ崎市民の暮らしを豊かにしていってください。本日はありがとうございました。

_d3_7297

Profile

中山 一生(なかやま かずお)

生年月日 昭和37年(1962年)11月13日

学歴 平成2年 3月31日 日本大学法学部卒業

公職歴
平成2年4月 衆議院議員中山利生公設秘書
平成5年6月~平成5年9月 国務大臣防衛庁長官秘書官
平成12年6月~平成15年10月 衆議院議員中山利生政策担当秘書
平成15年10月~平成17年9月 自民党茨城県衆議院比例区第一支部長
平成19年1月~平成21年11月 茨城県議会議員
平成20年11月~平成21年9月 自由民主党龍ケ崎支部長

資格 普通免許・アマチュア無線4級

趣味・特技 和太鼓・弓道

座右の銘 正射必中(せいしゃひっちゅう)

取材・文/小田実、松田然 構成・編集/藤巻美雪 撮影/河谷俊輔 写真提供/龍ケ崎市

URL :
TRACKBACK URL :

メッセージはこちら

*
* (公開されません)
*