原点に返る地方創生。「世界の酒田」へ
いいね!JAPAN編集長 小田実 × 酒田市長 丸山至

原点に返る地方創生。「世界の酒田」へいいね!JAPAN編集長 小田実 × 酒田市長 丸山至

ラーメンや米、海産物などの食文化をはじめ、映画のロケ地として使われるような自然と歴史的建造・・・と、一言では語り尽せない魅力が詰まった酒田市。今までその魅力を伝えきれずにいた酒田市が“港町酒田”という原点に返り、港を中心にまた盛り上がり始めています。今、そしてこれから酒田市が行っていく地方創生施策とは?
さらなる酒田の繁栄に向けて指揮を執る丸山市長と、酒田市出身のいいね!JAPAN編集長・小田の対談をお送りします。

酒田市の歴史的な建造物や自然をPR。「おしん」「おくりびと」など海外でも有名なドラマや映画のロケ地にもなっている酒田

小田 全国自治体の中で、自信を持って酒田が一番だろうという「酒田のいいね!なところ」はどこでしょうか?

丸山 個人的には、酒田から見る鳥海山が好きです。秀麗というか優しい雰囲気がある気がして。鳥海山も飛島も非常にいい素材だと思っており、今後の活用を考えるキッカケとして、「鳥海山・飛島ジオパーク」が日本ジオパークに認定されたことは、心から嬉しく思っています。今後の展開をぜひ楽しみにしていてください。

酒田市のシンボル鳥海山

酒田市のシンボル鳥海山

海山・飛島ジオパーク認定ののぼりを持つ丸山市長と酒田市公認マスコットキャラクター「あののん」。

海山・飛島ジオパーク認定ののぼりを持つ丸山市長と酒田市公認マスコットキャラクター「あののん」。

小田 酒田市は「おしん」「おくりびと」など海外でも有名なドラマ、映画の舞台にもなっています。ロケ地誘致に関してはいかがですか?

丸山 2014年に公開され大ヒットした邦画「るろうに剣心 伝説の最期編」では、庄内砂丘 赤川河口付近がロケ地として使われていましたね。また、2007年に製作されたヨーロッパ映画「シルク」では、酒田市の山居倉庫が舞台になっていました。監督が、港町としての風情が色濃く残っている山居倉庫の景観を気に入ったことから選ばれたそうです。

その他、歴史的な建造物や自然などロケーションの素材はたくさんあると思っており、映画やドラマの舞台として、もっともっと酒田を発信していきたいですね。

ロケ場所としても人気の山居倉庫

ロケ場所としても人気の山居倉庫

原点に返る地方創生施策。港で栄えたまち酒田を再び。

小田 酒田では花王の紙おむつ工場の生産が好調とのことで、これは中国が一人っ子政策を廃止してから一気に伸びたのだとか。他にも東北エプソンや平田牧場など、地元の有力企業が経済を牽引していると思いますが、市として企業をバックアップされているのでしょうか?

丸山 花王さんは中国でも紙おむつを作っているんですが、日本製が人気だそうで飛躍的に数字が伸びています。酒田港のコンテナの伸び率が日本一と言われているのは、花王さんの紙おむつの効果が非常に大きい。花王さんの工場が酒田にあること、そこで紙おむつを生産していることは、かけがえのない酒田の財産です。

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丸山 またプリンターで有名な東北エプソンさんも好調で、輸出に大きく貢献してくださっていますし、平田牧場さんの加工食品は東京でも名が通っており、酒田のひとつのブランドになっていると思います。こういった地元企業の活躍により雇用が拡大し、港も活気で溢れています。

そこで、さらに港を発展させるためにも、行政としては交通ネットワークの整備が早急の課題だなと。残念ながら山形は、高速道路も鉄道も全国に比べてかなりの遅れをとっています。このデメリットを一刻も早く解消し、港をもっと盛り上げていきたいですね。

来年は、酒田港に外国船(イタリアに拠点があるコスタクルーズ)の入港も決まり、荷物のみならず人の流れの面でも港には計り知れない可能性があると思っています。これをうまく活用して地域発展につなげていきたいなと。

来年酒田港に入港予定の「コスタクルーズ」

来年酒田港に入港予定の「コスタクルーズ」

若手起業家の支援のための場所づくり

小田 ベンチャー企業やITの誘致なんかだと、同じ庄内地方でも鶴岡市の元気の良さが目立っている気がして、酒田出身の私としてはやや悔しい気もしているんですが……。

丸山 おっしゃる通り、鶴岡には慶應義塾大学の先端生命科学研究所があり、ベンチャー企業の進出も盛んです。それに比べて酒田は目立った動きがなく、正直うらやましい気持ちはありますね。しかし、同じ分野で張り合っても仕方がないですし、港を持つ酒田は大手企業の活動が活発ですから、そこを中心に産業の振興を図っていければと。

ただ、酒田にも若い方々が起業を目指して自主的に勉強できる、「UNDERBAR(アンダーバー)」と名付けたコワーキングスペースがあります。そういった取り組みから、少しずつ庄内地域で事業を起こす人が現れて、東京から移り住む人が増えるキッカケになればいいですね。

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酒田を全国ブランドに押し上げる施策とは

小田 先日行われたイベント「酒田のラーメンexpo2016」では、丸山市長も動画に登場してPRされていましたよね。非常にいい取り組みだと感じました。

丸山 ありがとうございます。このラーメンexpoが開催されたことで、「酒田のラーメン」というひとつの固有名詞として、酒田を全国に発信できたのは何より良かったなと。基本は醬油ダシなんですが特定のブランドがあるわけではなく、各店舗毎のユニークな味わいが加味されているため、「酒田のラーメン」と、あえて間に「の」が入っているんです。

ラーメンexpoは酒田を売り出すビッグイベントとして、来年以降も展開したいですね。今回、他の地域とコラボしたラーメンを発売しましたが、今後もそういった取り組みを行いたいと考えています。

大勢の人で賑わう酒田のラーメンexpo

大勢の人で賑わう酒田のラーメンexpo

小田 来年は、ぜひ「いいね!JAPAN」の取材もかねて、私も参加させてください。
また9月24・25日と、武蔵野市で「酒田DAY in 吉祥寺」というイベントが開催されましたが、武蔵野市との交流のキッカケと今後の動きを教えてください。

東京武蔵野市で開催された「酒田DAY in 吉祥寺」

東京武蔵野市で開催された「酒田DAY in 吉祥寺」

丸山 平成元年に武蔵野市と酒田市の消防団が友好消防団の契約を結んだことがキッカケです。その流れを受けて、平成6年に武蔵野市とその他の市町村との交流議会が行われ、そこに酒田も入ったことで交流が盛んになったんですね。

吉祥寺にあるアンテナショップ「麦わら帽子」で酒田の農作物を取り扱ってもらったり、2年に1度、武蔵野市市民交流ツアーが開催され、武蔵野市民の皆さんに酒田にお越しいただいたり、武蔵野市がハブとなって、さまざまな市町村とのつながりができています。

酒田市自慢の日本酒をPR

酒田市自慢の日本酒をPR

また、11月7日には大型商業施設・coppice KICHIJOJI(コピス吉祥寺)の1階に、「酒田市役所・東京吉祥寺テラス」という出張所の窓口を設けることも決まりました。吉祥寺というにぎやかな街のなかに酒田市の情報発信窓口ができるということで、活用方法を模索しているところです。

タイへのPRは好感触。2020年に向けて酒田を世界に。

小田 タイのモデルツアーの受け入れやローマ視察など、酒田市の東京や海外に対するシティプロモーションの考えや計画について聞かせてください。

丸山 食文化の発信としては鶴岡市が先に取り組んでいますが、素材の良さでは負けていないと思っているので、鶴岡も含め「食の都」として庄内に人を呼び込みたいなと。今年はちょうど日本とイタリアの国交150周年記念ということで、その一環として5月25日~9月18日まで、酒田市出身の写真家「土門拳」氏の写真展がローマで行われました。オープニングセレモニーでは映像の放映などを通して、酒田の農林水産物や観光などをPRしたほか、現地のレストランで「酒田ウイーク」を開催し、大いに盛り上がりました。

ローマで開催された土門拳写真展で、地元メディアから取材を受ける丸山市長

ローマで開催された土門拳写真展で、地元メディアから取材を受ける丸山市長

また、タイには民間レベルで非常に注目をしており、タイのテレビ局の皆さんに酒田を取材していただいたことも。私も今までタイの皆さんと2度懇談し、この地域に関心を持ってくれていることを実感しています。海外との交流は人を磨くという利点に加え、観光面では経済発展の要素もあります。我々行政も一緒になって、おもてなしの再生に取り組んでいきたいですね。

小田 観光面の発展には、交通の便の良さ等も関わってくると思いますが、空路に関しては全国の地方空港の中でも利用者も多く好調ですよね。

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丸山 現在は東京行きが1日4便飛んでいて、ビジネス客が中心ではありますが、常時7割ほどの搭乗率を確保しています。庄内空港から羽田までは実質1時間。時間軸だけで考えれば立派な首都圏です。これを活用して他の地域の方、あるいは首都圏の方を酒田に呼び込む仕掛けを作れればと思っています。

今後はLCCを入れていただき、より安く、また結びつく空港によっては、より早く海外と結びつくような環境作りに努めます。

小田 2020年の東京オリンピック・パラリンピックが日本全体のメルマークになっていると思いますが、2020年に向けた酒田市の施策や動きを聞かせてください。

丸山 東京オリンピック・パラリンピックにおける「ホストタウン」という制度があるんですが、我々はニュージーランドとトライアスロンという競技を通じて、ホストタウンの関係を結びました。ニュージーランドではトライアスロンが非常に盛ん。一方、酒田でも31年前から「おしんレース」と呼ばれるトライアスロンの大会が開催されており、ニュージーランドから選手が来たこともあります。

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丸山 さらに、酒田には「ニュージーランド研究所」があり、現在、副市長を務める矢口はこの研究所の所長だったという経緯があります。そのようなつながりから、よりニュージーランドと密接に関わりたいとの思いがあり、今回ホストタウン登録が決定しました。

ニュージーランドはより濃厚に、市民が行政に参加するような地方システムを持った国だと思いますので、そういったところから影響を受けて、酒田の市民風土を高めていけたらなと。

小田 なるほど。東北といえば雪質がいいので、ウインタースポーツをしにオーストラリアやニュージーランドからもプレイヤーが来ていますよね。

丸山 そうですね。向こうの方からしてみれば、夏にやってきてこちらの冬が楽しめるのも魅力かなと。ただそうなると、やはり高速交通ネットワークを一刻も早く整備する必要があります。より一層魅力を高めるためにも、この問題は声を大にして訴えたいところです。交通ネットワークの拠点として、酒田の繁栄をもう一度取り戻したい。そんな思いで2020年まで駆け抜けていきます。

小田 江戸時代、北前船の寄港地として賑わいをみせ 「西の堺、東の酒田」. と言われるほど栄えた酒田市が往時の活況を取り戻しつつあります。 “原点に返る”ということも地方創世施策では重要な観点であることを今回の対談で学びました。昨年9月に丸山市長が就任されてから、酒田のラーメンexpoの開催や鳥海山・飛島ジオパークの誕生など精力的に展開されており、同じ酒田市出身として非常に嬉しく、また頼もしく感じました。2020年に向けて、駅前開発やニュージーランドとの取り組みにも期待しています。本日はありがとうございました。

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Profile

丸山至(まるやま いたる)
生年月日 昭和29年3月7日酒田市生まれ 62歳

最終学歴
昭和52年3月 山形大学人文学部卒業

主な経歴
昭和52年4月 酒田市役所採用
平成13年4月 酒田市企画調整課付主幹(学校法人東北公益文科大学へ派遣)
平成15年4月 酒田市商工港湾課長
平成16年4月 酒田市企画調整課長(兼合併対策室長)
平成17年4月 酒田市企画調整課長(兼合併準備室長)
平成17年11月 酒田市企画調整課長(兼地域振興室長)
平成18年4月 酒田市水道部管理課長
平成21年4月 酒田市健康福祉部地域医療調整監
平成22年4月 酒田市財務部長
平成24年4月 酒田市総務部長
平成24年12月18日 酒田市副市長
平成27年9月7日 酒田市長(現在1期目)

取材・文/小田実、高良空桜 構成・編集/藤巻美雪 撮影/鈴木智哉 写真提供/コスタクルーズ、酒田市

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