断熱が“日本のいいね!な家”をつくる
いいね!JAPAN編集長 小田実 × 建築家 竹内昌義

断熱が“日本のいいね!な家”をつくるいいね!JAPAN編集長 小田実 × 建築家 竹内昌義

 

「日本のいいね!を創っている人に会いたい」そんな思いで始めた「いいね!JAPANクリエーターズ対談」。第1回目となる今回は“住”をテーマに、山形でエコハウスの設計、運営に携わる東北芸術工科大学教授・建築設計事務所みかんぐみ主宰の一人である竹内昌義さんに、“”断熱建築のいいね!”についてお伺いしました。

小田 断熱建築に携わるようになったのは何がきっかけですか?

竹内 2008年に行われた北海道洞爺湖サミットで、ゼロエミッションハウスの存在を知ったのがきっかけですね。その時は「エネルギーを使わない家なんて日本にあるの?」と思っていたんですけど、設計によってはストーブひとつで充分に家を暖かくすることができるということを知り、すごく興味が湧き、次の年にはオーストリアに断熱建築について勉強しに行きました。

断熱建築は、ほとんどが木造の家なんですけど、すごく格好いいんですよね。これは面白いなと思いました。その時に東北の木を使って、オーストリアのような断熱設計の家を造りたいと思ったんです。

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小田 北海道洞爺湖サミットのゼロエミッションハウスは私も仕事で関わらせてもらったので、よく覚えています。竹内さんから見て今の日本の断熱建築の現状はいかがでしょう?

竹内 日本はヨーロッパに比べると暖かい国なんです。だから一般の断熱への意識がとても低い。徒然草で吉田兼好が「家のつくりやうは、夏をむねとすべし」と表現した、鎌倉時代の風通しの良い涼しい家をいまなお続けているんですから、断熱建築については遅れていると言っていいでしょう。日本は昔ながらの家の考え方で、冬の寒さを我慢して暮らしているんです。

ただ、建材の断熱性能は上がってきています。例えば、窓から暖かさって逃げてしまうので、断熱設計の家は窓が小さいってイメージが定着していたんですけど、今はそんなこと全然なくて、大きな窓であっても日本の風土を考えた断熱設計の家がちゃんとできるようになっています。

木の家については、環境にやさしいとか、省エネであるとか、注目はされていますよね。この木の家にちょっとした工夫を加えるだけで、断熱設計の家になるんです。断熱設計は気密が高くて嫌だという人もいますが、みんな車とか普通に気密の高い場所を利用しているじゃないですか。なんで気密の高い家がダメなの?ってボクは思いますね。

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小田 涼しい家より、暖かい家の方がいい。確かに、暖かい家庭の方がいいですよね(笑)

竹内 例えば、体の具合が悪い時や足腰が痛い時、今日は寒いからねぇって言うじゃないですか。そうなんです。寒いと人は調子が悪くなるんですよ。寒いと血圧が乱高下するから。あと女の人で冷え性に悩まされている人も多いでしょう。これ家が寒いからいけないんです。女の人が悪いんじゃなくて、家が悪いんです。日本人って冬は寒いのが当たり前だと思って我慢しちゃうけど、家が暖かければ我慢しなくてもいい、快適な暮らしができるんです。それに節電しましょうって時もハイって言って家の電気のスイッチを切っちゃうんですけど、寒いのって辛いじゃないですか。省エネのために東北の冬を我慢しましょうって言うのは無謀ですよ。体に良くない。家は暖かい方がいいに決まっています。

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小田 私も東北出身なのですごくよくわかります。私事ですが私の母も脳出血で倒れたのは脱衣所の寒さとお風呂の暑さの温度差が原因でしたから…。まさに省エネのために家の中を寒いままにしていました。本当に命に関わりますね。東北の冬の話が出ましたが、竹内さんから見た被災後の住宅の現状はどうなんでしょうか?

竹内 それは、辛かったですね…。被災地の住宅の再建については、実はあまり進んでいません。進んでいないってことが知られていないことが問題なのかも知れません。あと、過疎化の問題についても10年くらい前倒しに来てしまったという感があって、これについても日本は真剣に考えなければならない状況ですね。本当に深い問題です。

何より生業がなければ暮らしていけないですよね。僕が携わっていることに関して言えば、木造の家を建てる時に出てくる廃材を利用してバイオマス燃料などにしていくことも、ひとつの産業になっていくんじゃないかなと思っています。こうしたヒントは世界中にあって、我々日本人は日本が優秀だという変な奢りがあって、世界に目を向けていないけれども、もっとアンテナを張っていくことが重要だと思います。

小田 なるほど奢りですか。その割に日本人は欧米のものをありがたがる傾向もありますよね?西洋コンプレックスみたいな……。「奢りと謙り」ややこしい民族ですね(笑)。ちなみに竹内さんは山形でエコハウスを作られていますが、影響を受けた世界の事例はありますか?

竹内 例えば今、ヨーロッパではペレット(乾燥した木の破片)を利用したストーブが流行りつつあるんですけど、暖かいのはもちろん、ヨーロッパの人はこれを使って調理などもしています。横に水のタンクが付いていて、これが熱交換機の役割を持ち、ここで水を温めて給湯と暖房をするんです。ペレットはオイルの半分の値段で手に入るから、ランニングコスト面においても重宝しますよね。さらにこれを使うことによってエネルギーが自給できるんですよ。日本では電気代が高くなった、困ったって言っているけど、自給すればそんなことまったく関係なくなる。世界ではこうした環境にも優しく、省エネなことを一般的に実践してるんです。それに美しい火を見て暮らすって、とても素敵じゃないですか。理想の暮らしだと思います。

オーストリアの調理可能なペレットストーブ

オーストリアの調理可能なペレットストーブ

カウフマンアハ=ート

オーストリアのパッシブハウス
「カウフマンアパート」

小田 私の故郷山形県酒田市でも先日ペレットストーブの専門店ができましたよ。さて、理想の暮らしといえば、いまスマートグリッド(次世代送電網)、スマートシティが注目されていますが竹内さんはどう思われますか?

竹内 ダメですよ。なぜダメかって言うと、現状、スマートグリッドは計測機器だけじゃないですか。ただ計測して節約しなさいと言うだけじゃ当然ダメですよ。企業のスマートグリッドは、太陽光発電とメーターを売りたいだけなんで、何も革新的なことがないんですよ。ところが家に断熱設計を行うと、エネルギー使用量が半分、またそれ以上になるんです。僕はこちらの方が重要だと思います。環境にもおサイフにも優しい。ヨーロッパではこの進化がきちんと行われています。残念ながら日本にはきちんと伝わっていませんね。

小田 環境にもおサイフにも優しい社会が構築されるといいですね。最後に竹内さんご自身が取り組んでいる「いいね!」な事例について教えてください!

竹内 岩手県紫波町が行っている環境計画「オガールプロジェクト」に参加しているんですけど、これは実に「いいね!」な取り組みです。町全体が人や自然、文化を考えた都市開発に取り組んでいて、他の町村を牽引する素晴らしい住環境のお手本になると思います。こうした日本のいいね!な取り組みが沸々と沸き上がっていくのは本当に嬉しいですよね。僕も断熱建築という専門分野の面から、温かい日本の家づくりをこれからもお手伝いしていきたいと思います。

山形エコハウス

山形エコハウス

オガールプラザ

オガールプラザ

小田 竹内さんありがとうございます!“スマートシティよりも断熱シティ”ですね。今日はすごく勉強になりました。


構成・文/小田実 有馬敏浩 撮影/藤本真衣 写真提供/竹内昌義

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Profile

竹内 昌義(たけうち・まさよし) 

1962年神奈川県生まれ。東北芸術工科大学建築・環境デザイン学科教授。設計事務所みかんぐみメンバー。大学のある山形市で21世紀環境共生住宅型のモデル整備による建設促進事業、山形エコハウスの設計、運営に携わる。著書に「団地再生計画」(共著)、「POST=OFFICE/ワークスペース改造計画」(共著)、「未来の住宅 カーボンニュートラル住宅の教科書」、「原発と建築家」、「図解エコハウス」など。

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